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大阪高等裁判所 昭和57年(ラ)429号の2 決定 1983年1月31日

抗告人 谷恵理子

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一  抗告の趣旨と理由

別紙記載のとおり。

二  当裁判所の判断

当裁判所も家事調停委員は裁判所職員の除斥、忌避及び回避に関する民訴法の規定の準用がなく(家事審判法四条参照)、したがつて家事調停委員に対する忌避の申立は不適法であると判断するものであつて、その理由は原決定に説示のとおりであるからこれを引用する。なお参与員については家事調停委員におけると異なり裁判官の除斥、忌避及び回避に関する民訴法の規定の準用があるのは、参与員の関与する審判が事件の強制的解決法であるところからその公平を期し威信を担保する必要があることに由来し、家事調停委員は参与員と考えられるとする抗告人所論は採りえない。

よつて、抗告人の本件忌避申立は不適法であるとした原決定は相当というべきであり、本件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 今富滋 裁判官 西池季彦 亀岡幹雄)

申立ての趣旨

上記当事者(抗告人)の申立てた神戸家庭裁判所昭和五七年(家ロ)第一三四号家事調停委員忌避申立事件に付き、同裁判所が昭和五七年一二月三日になした「申立を却下する」との決定に対し、即時抗告をします。

申立ての理由

<1> 本件事件に付いて、家事調停委員の忌避の制度がない故、却下するとあるが、民事訴訟法の裁判所職員の除斥忌避及び回避が準用されると考え得る。

<2> ○○○調停委員は昭和五四年(家)第一五〇〇号審判昭和五三年(家イ)第九七二号婚姻費用分担、同第一一九七号、第一三六二号夫婦関係調整調停事件、昭和五七年(家イ)第五〇号婚姻費用分担(増額請求)事件に於いて、抗告人に対して著しく不公平な判断をし、抗告人の基本的人権を無視した言動を取つたので、忌避申立理由あるとする。

<3> 家事審判法に於いて、家事審判官、参与員、家裁書記官について、除斥忌避並びに回避に関する法律があるが、家事調停委員も参与員と考えられるので忌避の対象となり得る。

<4> 抗告人に対して悪意、予断偏見を持つている調停委員が、家事審判官に対して公正な報告、判断をするとは考えられない。

〔参照〕原審(神戸家昭五七(家ロ)一三四号 昭五七・一二・三決定)

主文

本件忌避申立を却下する。

理由

本件忌避申立の趣旨及び理由は別紙申立人作成の調停委員忌避申立書記載のとおりである。

そこで、本件申立について検討するに、家事審判法において、家事審判官、参与員、家庭裁判所書記官については、裁判所職員の除斥、忌避並びに回避に関する民事訴訟法の忌避の制度が準用されているが、家事調停委員についてはかかる準用規定がもうけられていない。元来家事調停は、当事者の合意を基本とする事件の自主的解決の方法であり、また調停委員の関与する家事審判法二三条及び二四条に規定する各審判事件についても、異議の申立によつて失効するものであるから、特に除斥、忌避または回避の制度の適用を必要としないと認められたことによるものと解される。

そうすると、家事調停委員については忌避の制度がないことに帰するところ、これを前提にした本件申立は不適法であるのでこれを却下することとし、主文のとおり決定する。

申立の趣旨

昭和五十四年(家)第一五〇〇号審判、並びに昭和五十三年(家イ)第九七二号婚姻費用分担、同第一一九七号第一三六二号夫婦関係調整調停事件、昭和五十七年(家イ)第五十号婚姻費用分担(増額請求)事件の各記録、並びに調停中の申立人の記録によると、調停委員の内、女性の調停委員の申立人に対する態度、言動、裁判官への報告には、悪意、偏見、予断、差別観に充ち満ちたものがあり、相手側を擁護し、相手側の利益を守るために、申立人に不利な証言を故意にし、申立人の基本的人権を無視し、著しく侵害したので、調停委員忌避を申立てます。

理由

右記の通り、調停委員の内、女性の調停委員は、申立人への悪意、偏見、予断、差別観等により、申立人に対し終始横柄な態度で接し、いやがらせを言い、罵声を沿びせ、故意に申立人に不利な証言、記録を残し、申立人を窮地に陥れた。そのため、昭和五十三年十二月二十七日に申立てた夫婦関係調整調停事件は、昭和五十四年六月十五日不調となり、昭和五十四年七月十日に申立てた婚姻費用分担事件は、右記裁判官忌避申立書に記した様に、事実を全く曲解、誤謬し、相手方に全面的に非があるにもかかわらず申立人に非があるとした申立人に極めて不利な審判が下つた。

調停中の調停委員の内、女性の調停委員の申立人に対する言動の例

(1) 「貴女はすぐかつとなつて滅茶苦茶な行動に走る性格を持つている。だから夫から追い出されたのだ。」と何の根拠もないのに決め付けた。

(2) 「夫から嫌われて離婚を申し渡されているのだから、あきらめてすぐ離婚に応じなさい。往生際の悪い女ね。」と離婚を強要した。

(3) 「夫から金をもらおうなんて金輪際考えない事ね。失対事業でも掃除婦にでもなつて働く事ね。何なら売春という手もあるわよ。」申立人は当時、今もそうだが、生来の病弱に加えて、相手方による離婚強要のため、膵臓炎、慢性胃炎、過敏性大腸炎が悪化し、うつ病、不眼症、相手方の殴打による左耳鳴等の傷病にかかり、通院治療していた。この事を承知の上での発言である。

(4) 申立人がものを言おうとすると、いつも「黙りなさい!」「調停委員の言う通りにしなさい!」と怒鳴りつけた。(5)今回の調停に於いても、「離婚に応じて、生活保護を受けなさい。」と申立人が離婚の意思が全く無い事を表明しているにもかかわらず、離婚を強要した。

右記理由により、今後も申立人に対する不利な証言、報告、要求がなされ、申立人の基本的人権が侵害される恐れが濃厚であるので、右調停委員の忌避を申立てます。

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